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マネージャーは知っておくべき、経営戦略とは

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マネージャーは知っておくべき、経営戦略とは

マネージャーは知っておくべき、経営戦略とは

80年代にマイケル・ポーター氏の競争戦略論が世に出てから、アメリカ、ヨーロッパを経由して、日本にも経営戦略論の一大ブームが巻き起こりました。バブル経済崩壊やリーマンショックなどが起因となり、経営戦略論ブームは一段落しましたが、経営学の世界では、むしろ不況だからこそ戦略論を磨き上げるチャンスとみなされ、戦略論の研究がふたたび隆盛を極めるようになり、現在に至っています。今回は、マネージャーならぜひ知っておきたい「経営戦略」のポイントをご紹介します。

経営戦略とは「経営資源の配分」を考えること

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

経営戦略とは、「戦略」という言葉からもうかがえるように、ある企業が活動している場を戦場に見立てて、競合他社との戦いに勝利し、「永続的に、利益を上げる」という企業の存在目的を達成するために必要な打ち手のことです。
研究者や時代によって経営戦略の定義や見方は変化していますが、要するに、目標を達成するために限られた経営資源(ヒト・カネ・モノ)をどのように配分するかを考えること、これが経営戦略のエッセンスだといえるでしょう。
では、経営戦略はどのような流れで具体化していくのでしょうか。後述のとおり、経営戦略は全社戦略・事業戦略・機能戦略の3類型がありますが、いずれの類型であっても、「環境分析」、「ドメイン設定」、「戦略策定」という手順を踏みます。
まず、環境分析は、企業を取り巻く環境について、さまざまな手法を用いて情報を集め、網羅的に分析を施すものです。内部環境であればPEST分析やファイブ・フォース分析、外部環境であればバリューチェーン分析やVRIO分析といった手法を駆使します。また内部・外部双方にまたがる情報であれば、3C分析やSWOT分析を用います。
環境分析を終えたら、次はドメイン設定に入ります。ドメインとは事業領域のこと。一つの企業ができることは限られていますから、どの市場のどの分野で、どのような事業に取り組むのかを設定します。
この作業の本質は、経営者の熱い思い(こんな仕事をしたい、あんな価値を社会に提供したい)を、環境分析で明らかにされた「現実の姿」によって修正する点にあります。経営者であれば誰でも大きな夢を持っていることでしょう。しかし、経営に利用できる資源(ヒト・カネ・モノ)は限られていますし、激しい競争状態にある市場であれば、そもそも参戦すること自体が不可能な場合もあります。夢と現実をはかりにかけ、実行可能な事業領域を確定するのがドメイン設定なのです。
ドメイン設定を終えると、いよいよ本丸である戦略策定に入ります。具体的には、全社戦略・事業戦略・機能戦略のいずれかを選択することから始め(詳細は次の見出しに譲ります)、ロジカルシンキングを駆使した具体的な経営戦略を策定していきます。策定後は、実行、そして評価が待っています。

全社戦略・事業戦略・機能戦略のどれを目指すか

【引用元:pakutaso】
【引用元:pakutaso】

経営戦略を定める場合、まずどのレベル・目的を想定しているかによって、全社戦略、事業戦略、機能戦略の3つに分類されます。
(1)全社戦略
全社戦略とは、企業内の複数の事業、あるいは企業グループ全体について、いかに経営資源を配分し、打ち手を実施するかを考えるということです。たとえば、家電、半導体、発電所など複数の巨大産業を持つグループ企業が、不採算部門となった半導体事業を海外の企業に売却したり、過大な負債のため事業継続が困難になった発電所部門を倒産処理したりする、といったような戦略です。
(2)事業戦略
事業戦略とは、企業内の特定事業について、いかに経営資源を配分し、打ち手を実施するかを考えるということです。たとえば、出版社であれば、紙の出版事業と電子書籍事業を分けて、両者の市場の成長度を勘案し、電子書籍事業に経営資源の再分配を行う、といったような戦略です。
(3)機能戦略
機能戦略とは、事業遂行上の個別機能において、いかに経営資源を配分し、打ち手を実施するかを考えるということです。たとえば、顧客ニーズにあわせた商品を検討するマーケティング戦略、カネ資源の調達法を考える財務戦略などです。
当然のことですが、巨大なグループ企業を擁する商社などでは、全社戦略を行うことは一大事です。個別の事業ごとの戦略策定でさえ大変な労力がかかるというのに、すべての関連事業について情報を集め、分析し、全社体制での戦略を練るとなれば、長い準備期間と膨大なコストが必要となります。この場合、社内のマネジメント担当者の手には到底負えないレベルの仕事ですので、外部のコンサルタント、特に戦略論の分野で実績のあるプロ中のプロに依頼することになります。

伝統的経営戦略論にはリスクがある

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

経営戦略を策定する前に、そもそも経営戦略は意図的に事業に前もって策定するものか(意図的アプローチ)、それとも事業をまずやってみて、その結果を受けて形成されていくものか(創発的アプローチ)、という問題があることを理解しておきましょう。
アメリカを中心とした伝統的な経営戦略論は意図的アプローチを取ります。これは、論理的・形式的に考える意図的アプローチのほうが、経営判断の材料として利用しやすいということや、比較的小さな企業でも気楽に経営コンサルティングを受けるという社会的土壌があること(言い換えるなら、コンサルタントの提示する戦略を信じ、対価を支払うことに抵抗が無いこと)といった事情があるようです。
ただ、コンサルタントやマネジメント担当者が経営戦略策定のために必死に収集した情報も、時間の経過に伴いどんどん変化することは避けられません。したがって、当時は正しかった分析も、その分析に基づいて策定された経営戦略も、次の年度にはカビの生えた古臭い紙切れになることもありえるわけです。戦略に基づいて意図的に企業活動を行うという経営判断には、この「期待はずれ」というリスクが常につきまといます。
他方、創発的アプローチでは、基本理念やビジョンを策定したら、あとは日々の業務の成果や刻々と変化する市場環境などを、商品やサービスの開発にすばやく応用させながら経営戦略を刷新していきます。
現代のコンビニやスーパーのように、コンピューターによってすべての店舗の売上げデータが瞬時に中央の管理部門に集約される状況下では、1日や2日、時には半日という超短期スパンで、「ミニ経営戦略」の意思決定が延々と繰り返されます。あわただしく変化する現場では、意図的アプローチで柔軟に対応することは不可能なのです。
このように、経営戦略の2つのアプローチは、どちらが優れているのかということではなく、互いに補完しあう関係にあります。各企業の適性によって取捨選択するのが正しい態度だといえるでしょう。

戦略実行の段階で大切なこと

【引用元:pakutaso】
【引用元:pakutaso】

経営戦略を策定したら、次は実行です。もちろん、実行の前に、「どうやって経営戦略を策定するか」という重大な問題があるわけですが、分析手法や策定理論はあまりにも多岐にわたり、しかもその一つとして欠かすことはできないものばかりです。ここで説明することは不可能ですので、必要に応じて経営戦略論の専門書をひもといてください。
以下では、策定した経営戦略を実行するときに大切なことを説明します。
戦略は、まず実行に必要な経営資源を配分することから着手します。ヒト・カネ・モノは企業活動のガソリンであり、これら無しでは売上げも生まれません。大企業が、不採算部門の統廃合を行うのも、経営戦略に基づいて経営資源の再分配をしているわけです。経営資源の配分こそが、経営戦略を成功させるための第一歩だといえるでしょう。
次に必要なことは組織の変革です。新しい経営戦略に基づいて新規プロジェクトなどを立ち上げるのであれば、そのチームの組織化などです。すでにある組織を活用するのか、まったく別個の組織を作り上げるのかでは、かかるコストはまるで違います。ここで判断を間違うと大きな損失につながるので要注意です。
組織の変革が済んだら、いよいよ具体的な事業の遂行にかかります。戦略計画は事業の進捗や成果に応じて、資源を再配分したり、実行過程を変更したりといった微調整が欠かせません。そのための準備として、戦略遂行の管理を行うプロジェクトチームへの経営資源の配分や組織化を行います。
もっとも、経営資源の配分や組織化は、なにも経営戦略を策定し、代取の決済が降りるまで待つわけではありません。「戦略策定し、計画に基づいて資源を配分し、組織の変革をして、そのすべてについて決済を受けて……」などと悠長なことをしていたら企業活動は成り立ちません。戦略の適切な実行を管理する部門への資源配分と組織化についても、経営戦略の青写真をつくる段階で盛り込んでおくことになります。

経営戦略の評価に用いるフレームワーク

【引用元:写真AC】
【引用元:写真AC】

策定した戦略を実行すれば、当然その成果が出ます。一つの経営戦略は、策定した経営戦略が業績向上に奏功したかの評価・分析までが含まれます。
評価・分析には、バランススコアカードとSWOT分析を用います。バランススコアカードは、従来の財務指標にこだわらず、顧客や人材などの視点から戦略の達成度をチェックするフレームワークです。1992年に発表された新しい理論ですが、これまでの戦略評価がどうしても財務指標に偏りがちだった欠点を補えることから、世界中の企業で有用な業績評価法として採用されています。
バランススコアカードは「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」という4つの視点で構成されます。「財務」なら収益性・融資・資金繰り、「顧客」なら顧客満足度・サービス・コスト、「業務プロセス」ならIT化・生産性・経費削減、「学習と成長」なら人材確保・人材教育・統率管理というように、各視点ごとに設定する指標があります。この指標をきめ細かく設定することで、経営戦略の達成という最終目標をめざします。
SWOT分析は、企業の内部環境と外部環境から「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素を抽出するフレームワークです。経営戦略を立てる段階で活用されてきたおなじみの理論ですが、実行した経営戦略の成果を分析する際にも活用できることはいうまでもありません。
経営戦略のポイントを駆け足でご紹介しました。今回は挙げませんでしたが、経営戦略論の本丸が「策定の方法」にあること、そしてその内容が膨大であることは本文で述べたとおりです。今回ご紹介した内容はごくごく基本的なエッセンスですので、マネジメント担当者や経営者のみなさんは、ぜひ経営戦略論の専門書を手にとって熟読されることをおすすめします。

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