企業が長期的な方向性や理想像を明確に示したものが「ビジョンステートメント」です。単なるスローガンや経営目標とは異なり、企業が将来どのような姿を目指すのかを社内外に示す重要な指針となります。今回は、ビジョンステートメントの役割や作成方法、企業事例を紹介します。的確なビジョンステートメントを作成するポイントも解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ビジョンステートメントとは
ビジョンステートメントとは、企業が将来目指す姿や理想像を明確に言語化 したものです。経営理念を基盤に、5年先・10年先を見据えた長期的な方向性や目標を示し、経営者はもちろん、従業員や株主、顧客などのステークホルダーが共有できる共通の未来像 を描きます。
ミッションステートメントとの違い
ビジョンステートメントは、企業が5年後・10年後にどのような姿を目指すのかといった将来像を文章で示したものです。一方、ミッションステートメントは、その将来像を実現するために現在果たすべき役割や使命、存在意義を明文化したもの で、企業の現在の在り方を定義します。
両者はいずれも、経営理念を構成するMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の重要な要素 です。
ビジョンステートメントの企業事例
さまざまな業種や規模の企業が、どのように将来像を描き、それを言語化しているのか知ることで、自社のビジョンを具体的に描きやすくなります。ここでは、企業や省庁が掲げているビジョンステートメントの事例を6つ紹介します。
ディー・エヌ・エー(DeNA)
DeNAは、モバイル・ゲーム事業からヘルスケア事業まで幅広く展開するIT企業です。エンターテインメント領域と社会課題解決の両軸を掲げ、テクノロジーを活用した新しい価値創造を目指しています。
▼ビジョン DeNAは、インターネットやAIを自在に駆使しながら一人ひとりの人生を豊かにするエンターテインメント領域と日々の生活を営む空間と時間をより快適にする社会課題領域の両軸の事業を展開するユニークな特性を生かし挑戦心豊かな社員それぞれの個性を余すことなく発揮することで世界に通用する新しいDelightを提供し続けます
出典:ディー・エヌ・エー「ミッション・ビジョン・バリュー 」
ANAグループ
ANAグループは、航空事業を中心に旅行・物流・商社機能まで手がける総合サービス企業です。航空業界のリーディングカンパニーとして、空を起点とした多様なつながりで人々の可能性を広げることを目指しています。
▼ビジョン ワクワクで満たされる世界を 私たちは、空からはじまる多様なつながりを創り、社員・お客様・社会の可能性を広げていきます。
出典:ANAグループ「経営理念・ビジョン・行動指針 」
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、日本を代表する自動車メーカーとして、モビリティ社会の発展に貢献してきました。自動車製造から「モビリティ」へと領域を広げ、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。
▼ビジョン 可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える。 不確実で多様化する世界において、トヨタは人とモノの「可動性」=移動の量と質を上げ、人、企業、自治体、コミュニティができることをふやす。そして、人類と地球の持続可能な共生を実現する。
出典:トヨタ自動車「トヨタフィロソフィー 」
デジタル庁
デジタル庁は、2021年に設置された日本政府のデジタル化推進を担う中央官庁です。行政サービスのデジタル化と社会全体のDXを推進し、誰もが使いやすいデジタル社会の実現を目指しています。
▼ビジョン 1.優しいサービスのつくり手へ。Government as a Service国、地方公共団体、民間事業者、そのほかあらゆる関係者を巻き込みながら有機的に連携し、ユーザーの体験価値を最大化するサービスを提供します。 2.大胆に革新していく行政へ。Government as a Startup高い志を抱く官民の人材が、互いの信頼のもと協働し、多くの挑戦から学ぶことで、大胆かつスピーディーに社会全体のデジタル改革を主導します。
出典:デジタル庁「ミッション・ビジョン・バリュー 」
弥生
弥生は、中小企業・個人事業主向けの業務ソフトウェアを提供する会社です。会計ソフト「弥生シリーズ」で培った経験を活かし、事業者の多様なニーズに応える総合的な支援サービスを展開しています。
▼ビジョン 共有・共生・共創の力を活かし、お客さまの事業の立上げと発展の過程で生まれるあらゆるニーズにお応えする「事業コンシェルジュ」
出典:弥生「弥生のミッション・ビジョン・バリュー 」
出前館
出前館は、出前・デリバリーサービスを運営する企業です。全国の飲食店とユーザーをつなぐプラットフォームの提供を通じて、地域に根ざしたサービス展開で地域経済の活性化に貢献しています。
▼ビジョン 地域の人々の幸せをつなぐライフインフラ私たちはそれぞれの地域に根付いたサービスを展開し、あらゆる人々を支えるライフインフラとして地域経済の更なる活性化を目指します。ただ単に””食事””や””モノ””をお届けするだけではなく、地域の人と人を繋ぎ、幸せな時間をお届けしたいと考えています。
出典:出前館「ミッション・ビジョン・バリュー 」
【5ステップ】ビジョンステートメントの作成方法
ビジョンステートメントは、企業の将来像を明確にし、組織全体が同じ方向へ進むための指針となります。ここでは、自社が目指す将来像をどう言葉にするか、ステップごとに解説します。
ステップ1|なぜ創業したかを確認する
まずは、創業の原点を振り返りましょう。事業を始めたきっかけや当初の理念を改めて明確にすることで、事業の本質が見えてきます。 あわせて、創業時から現在までにどのような変化があったのかを整理し、自社の立ち位置と今後の方向性を確認しましょう。
ステップ2|ミッション・バリューと一体的に考える
経営理念の構成要素として、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を切り離さず一体的に考えます。 ミッションは「成すべきこと」、ビジョンは「目指す将来像」、バリューは「提供する価値」を示すものです。
まず自社が社会に対して提供できる価値を明確にし、その延長線上にある理想の姿をビジョンとして描きます。ビジョンが定まれば、それを実現するために企業や従業員がどのような行動や姿勢を取るべきかも明確になります。
ステップ3|ディスカッションする
実効性のあるビジョンステートメントをつくるには、経営者の思いだけに偏らず、従業員の意思も反映させることが重要 です。そのためには、経営者と各部門の代表者が十分に話し合い、企業が最も重視すべき目標や業績、今後の方向性についてコンセンサスを確立 する必要があります。各部門内でも、代表者とメンバーが意見を交わし、多様な視点を反映させましょう。
ステップ4|キーワードを書き出す
ブレインストーミングを通じて、ビジョンに関連するキーワードをできるだけ多く書き出しましょう。 商品・サービスや経営方針、従業員、採用など、具体的な対象を思い浮かべながら幅広く抽出する のがポイントです。
最終的には簡潔に表現されたビジョンステートメントに仕上げますが、その前段階として、自社の事業や長期戦略において核となるキーワードを特定することが重要です。経営層や関係者との意見交換を通じて、キーワードリストを作成しましょう。
ステップ5|ステートメントにまとめる
書き出したキーワードに優先度をつけ、特に重要なものを抽出 しましょう。抽出したキーワードは、意味が伝わりやすいように組み合わせたり分割したりして、まずは3〜5文程度の短い段落にまとめます。 そこからさらに絞り込み、最終的には一文で表現できるビジョンステートメントに仕上げるのが理想です。使用しなかったキーワードも無駄にはせず、部門やチームごとのビジョン作成に活用しましょう。
ビジョンステートメントに必要な要素
ここでは、的確なビジョンステートメントを作成する際のポイントとなる要素を4つ解説します。
明快で簡潔
ビジョンステートメントは、要点を簡潔かつ明快に表現することが重要 です。冗長な言い回しや不要な情報は省き、企業の本質や将来像が一目で理解できる文章にまとめましょう。
未来志向
ビジョンステートメントは、現在の姿ではなく「将来こうありたい」という理想像を描くもの です。視点を未来に向け、自社が社会や業界でどのような立場を築くのかを見据えた上で作成しましょう。
野心的でありながら現実的
ビジョンステートメントは、大きな夢を描きつつも、現実に根ざしたものであること が重要です。あまりに非現実的な目標では、かえって意欲を損ない、形骸化してしまいます。理想は、簡単には達成できないが、時間や労力、エネルギーを注げば実現できると感じられる内容です。適度な挑戦が、従業員やステークホルダーの結束を促し、「自分たちならやれる」という前向きな意識を生み出します。
共感と希望
すべてのステークホルダーが共感し、未来への希望や期待を抱けるビジョンステートメントを作成しましょう。 特定の事業分野だけに偏らず、企業全体をつなぐ視点で描くことで、多くの人が自分ごととして受け止められるビジョンになります。共感が生まれれば、各自の中に前向きな意欲が芽生え、課題にも主体的に取り組む姿勢が促されます。
まとめ
ビジョンステートメントは、企業の未来像を明確にし、組織全体の方向性を揃えるための羅針盤です。明快かつ簡潔で、未来志向でありながら現実的な内容にすることで、ステークホルダーの共感と希望を喚起できます。
今回紹介した5ステップと事例を参考に、自社ならではの言葉で将来像を描き、企業の持続的な成長につながるビジョンを作成しましょう。
また、ビジョンステートメントは作成後にも浸透に注力することが重要です。MACオフィスでは、企業にとって最適なオフィス環境の整備をサポートしています。中でもビジョンステートメントの浸透を促すオフィスブランディングやオフィス構築なら、MACオフィスの「オフィスプランニング」をご活用ください。
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