オフィスの移転やリノベーションを検討するとき、多くの担当者が「どのようにスペースを配置すれば良いか」という悩みに直面します。業務効率を高め、従業員が働きやすい環境を整えるために欠かせないのが「ゾーニング」という考え方です。
今回は、オフィスゾーニングの基本的な意味から具体的なメリット・進め方まで詳しく解説します。
オフィス環境の最適化に必要な「ゾーニング」とは
ゾーニングの意味とレイアウトとの違い、そしてオフィスの主なゾーン区分について順に解説します。
ゾーニングの基本的な意味
「ゾーニング(zoning)」は、空間や土地を用途・機能ごとに分割したり、対象を属性別に分類・配置したりすることを指します。
オフィスにおけるゾーニングでは、オフィス空間を用途・機能・求めるセキュリティレベル別に区分けします。
用途を明確に分けることで、各エリアが担うべき役割がはっきりし、従業員が迷いなく行動できる環境が生まれます。オフィスの機能性を高めるためにも、ゾーニングは欠かせない考え方です。
ゾーニングとレイアウトの違い
ゾーニングはレイアウトの前段階で、空間の大枠をつくるために行います。一方のレイアウトは、ゾーニングで定められたエリアの中にデスクや椅子・家具・設備をどのように配置するかという、より具体的な空間設計の作業です。
まずゾーニングで全体の空間構造を決め、その後にレイアウトを詰めるという順序が重要です。
オフィスの主なゾーン区分
オフィスは主に次の4つのゾーンに区分けされます。
1.来訪者を対象とした「来客ゾーン(パブリックゾーン)」
エントランス・受付・応接室など企業の「顔」となるスペースです。来訪者が執務エリアを通らずに目的の場所へ行ける動線設計が求められます。
2.従業員が日常的に業務を行う「執務ゾーン(ワークゾーン)」
業務に集中できる環境が最重要で、基本的には社外の人が立ち入らないようにゾーニングします。
3.限られた従業員のみが立ち入れる「セキュリティゾーン」
オフィスの最奥部に配置し、最高レベルのセキュリティを確保します。役員室やサーバールーム・機密文書の保管庫などが該当します。
4.会議室・給湯室・社員食堂などを含む「共有スペース」
複数の従業員が利用する前提のスペースです。
各ゾーンの利用者と目的を明確にすることで、機能的なオフィス設計が実現します。
ゾーニングのメリット
ゾーニングを適切に行うことで、業務効率・セキュリティ・コストの面でさまざまなメリットが得られます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
業務効率・生産性の向上
ゾーニングは、従業員の非効率な移動をなくして生産性を高める効果があります。連携の多い部署同士を近くに配置したり、コピー機や資料室など全部署が頻繁に利用する設備をオフィスの中心に置いたりすることで動線がスムーズになります。
また、集中エリアと打ち合わせエリアを分けることで音や視線による干渉が減り、それぞれの作業に集中しやすい環境が整います。生産性を左右するオフィス環境の整備において、ゾーニングは最も基本的かつ効果的な手段です。
セキュリティの強化
誰でも入れる「パブリックゾーン」、従業員のみが入れる「ワークゾーン」、限られた役員や管理者のみが入室できる「セキュリティゾーン」を明確に区分けすることで、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。来訪者の動線と従業員の動線を分離するだけでも、セキュリティレベルは大きく向上します。
また、ゾーニングが適切に行われることで、エリアごとに入退室の制限を設けたり、セキュリティレベルに応じた設備を導入したりといった追加施策も進めやすくなります。
コスト最適化
ゾーニングによって、オフィス空間がどのように使われているかが分析しやすくなります。利用頻度の低いエリアを別の用途に転用することで、オフィス面積の最適化につながります。
ゾーニングは、コスト効率の改善にも直結する取り組みなのです。
ゾーニングの進め方・ステップ
ゾーニングの進め方を、順序立てて解説します。なお、ゾーニングには社内セキュリティや消防法等の法律が関わるため、専門業者に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
STEP1|オフィスのコンセプト・目的を決める
ゾーニングを始める前に、まずオフィスの目的やコンセプトを具体的に言語化することが重要です。経営層や関係者間で方向性を共有することで、後のプロセスがスムーズに進みます。
コンセプトを決める際は、各部署の担当者や従業員に対し、どのような配置や広さが働きやすいかをヒアリングすることが効果的です。企業文化・現在のオフィスの問題点・新しい働き方への挑戦・将来の組織変化など、現状と将来の両面を見据えてコンセプトを練ることが推奨されます。
STEP2|必要なスペースと面積比率を洗い出す
コンセプトが定まったら、自社の業種・業務内容・従業員数と出社率を加味しながら、必要なスペースの種類とそれぞれの面積比率を洗い出します。リモートワーク中心の会社なら会議室をコンパクトにするなど、自社の実態に即した検討が必要です。
一般的に執務スペースはオフィス面積全体の50〜55%を占めるとされています。今後の増員や部署の増設も見越して、余裕を持った計画を立てることが重要です。
関連記事:「オフィスの適正坪数を決める5つのポイント!同時に必要な働き方の設計とは?」
なお、個人情報保護法に伴うプライバシーマークやISOを取得する際には、必要な基準や要件を満たしたゾーニングが必須となるため、事前に確認しておくことも重要です。
STEP3|セキュリティレベルごとにゾーンを分類する
必要なスペースが把握できたら、それぞれのスペースに適したセキュリティレベルを設定します。セキュリティレベルを軸にゾーニングを行うことで、より効果的な空間設計が可能となります。
例えば、セキュリティレベルの高い区域をエントランスから離して配置し、来訪者と従業員の動線を分けることで、自然な形で人の流れを制御できます。
STEP4|動線を考慮して各スペースの配置を決める
次に、各スペースをオフィス空間にどのように配置するかを検討します。
メインの動線はなるべく短く直線的に確保することがポイントです。各デスク間の距離・通路の幅・キャビネットとの距離なども念入りに考え、従業員が快適に働ける環境を整えましょう。
STEP5|将来の変化を見越した柔軟性を確保する
組織の現状だけでなく、従業員数の変化・組織改編・働き方の多様化など将来の変化を見越した柔軟なゾーニングが重要です。
例えば、増員予定があれば執務スペースを広めにとっておき、さらに可変性がある打ち合わせスペースを執務スペースに隣接させておくと、レイアウト変更を低コストで実施できます。
まとめ
オフィスゾーニングは、空間を用途や機能別に区分けすることで業務効率・セキュリティ・コストをまとめて最適化できる、オフィス環境整備の基盤となる考え方です。コンセプトの設定から始まり、必要なスペースの洗い出し・セキュリティレベルの分類・動線設計・将来への柔軟性確保という5つのステップを順序立てて進めることで、自社の働き方に合ったオフィスが実現します。
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